目次
親子上場の解消に向けた動き
親子上場とは
親子上場とは、その名の通り親会社と子会社が共にに上場していることを指します。
東証1部同士の親子上場だけでも現在100社以上、全体では200社以上あるといわれています。これだけ親会社の子会社が上場しているのは日本独特のようですね。
少数株主の権利が強い欧米では、もし親子上場をしていると訴訟になるリスクもあるので、親子上場はほとんどないとのこと。
どういうリスクかというと、親会社の株主と上場子会社の株主の利益が相反した時に訴訟になる可能性が高いらしいのです。
アメリカでは、訴訟の費用が莫大ですから、こういうリスクを排除するために親子上場がないのでしょうね。
では、なぜ日本ではこれだけ多くの親子上場があるのでしょうか?
親子上場の何が問題なの?
親子上場の問題点は何か?を簡単に説明していきますね。
先ほどもお話ししたように、親子上場の問題点は、親会社と子会社の株主の利害関係が必ずしも一致しない!ということにあります。
親会社は子会社の大株主であり、子会社が上場するまでは自分の会社の一部だったわけですから、「自分の所有物!」という意識が大きいです。でも上場に際し株を手放して売ってしまっているのです。
子会社の株主から見たら、「我々は、子会社の事業や財務内容に魅力を感じたからこの会社の株を買った!」「親会社は関係ない!」という思いがあるのですね。
一方で親会社は、自分の子会社だ!という意識が強いものですから、自社の有利になるように子会社に影響を与えようとする。
ここで利害関係が反する可能性があるわけです。
親会社と子会社の株主に利害関係の相違が出た時に、この間を取り持つ仲介者のような役割を果たすのが、「社外取締役」といわれています。
でも日本の多くの社外取締役は、経営のプロでないことが多く、この役割があまり機能していないようです。
最近話題になった例では、ヤフーとアスクルの問題がありましたよね。
ヤフーは、アスクルの親会社なのですが、アスクルが行っている個人向けネット通販サービス「LOHACO」を自分によこせ!といって来たのですね。
「LOHACO」は、ヤフーショッピングのサイトで見かけるので馴染みがありますよね。でも、アスクルがやっているサービスなのです。
アスクルからすると、ヤフーとのシナジー効果を期待して傘下に入って新事業を立ち上げたのに、それがうまくいきだすと親会社から持っていかれる・・・
「それはないでしょう~」となった訳です。”ジャイアン”にせっかく買った漫画の本を取られる”のび太”みたいな感じですよね(笑)
で、アスクルとしてはその申し出を断った訳です。すると、ヤフーは親会社で大株主なわけですから、株主総会の議決権を行使して、
「アスクルの社長と社外取締役をクビにする」という強硬手段に出たのです。
ここで問題視されたのが、社外取締役までクビにしたということです。
先ほども言ったように社外取締役は、「社外」という立場で会社のために中立的な立場で意見を言える存在なのですね。
親会社が支配的な株主として好き勝手が出来ないようにけん制する役割を果たすのが、社外取締役なのです。
それを言うこと聞かないからクビ!となった訳ですから、これって問題じゃない?と親子上場の問題点が日本でもクローズアップされてきたのです。
もし自分がアスクルの株を買っていたら、「おい!」って感じですよね。ヤフーの株買ったんじゃないぞ!って。
(難しく言えばもっと色々とあるようですが、ざっくりと簡単に書きました~。その点はお含みおきくださいね。)
東証が親子上場の見直を発表
政府は2019年6月に閣議決定した「成長戦略実行計画」のなかで、親子上場の問題を取り上げました。
そして、上場子会社のガバナンスの指針などを公表したのです。
国の方針には、逆らえません。東京証券取引所は2019年11月、上場子会社の親会社からの独立性を維持するために上場制度に関する規則を改定すると発表したのですね。
上場の制度が変わるとなると、これは大きなお金が絡む話になってきますよね。
なぜ親子上場廃止が注目されているのか?
上場子会社の独立性を高めるために、そしてその少数株主の権利を守るために「上場のルールを変えます!」と東証が言ったわけです。
すると当然、会社の再編ということになりますよね。
独立した会社、しかも上場している会社が再編となるわけですから、株の権利でお金が動きます。
だから投資家の目が一気にこの問題に集まるようになったのです。
親子上場を解消する方法
親子上場を解消する方法は、主に次の2つです。
①株式交換による完全子会社化での解消
②親会社のTOBによる完全子会社化での解消
※TOB(ティーオービー)・・・株式公開買い付け(Take Over Bid)の略称。上場企業の発行する株式を、通常の市場売買でなく、あらかじめ買い取る「期間」、「株数」、「価格」を提示して、市場外で一括して買い付けること
ある研究によると、
①株式交換による完全子会社化での解消の場合
親会社の株価が平均 0.91%下落する
②親会社のTOBによる完全子会社化での解消
親会社の株価が平均3.20%上昇する
といわれています。よく親子上場解消のTOBを耳にするのは、このためかもしれませんね。
海外のファンド勢も注目
このように親子上場解消には、TOBを含む何らかの手段を行使することででお金が動きます。
ですから個人投資家だけでなく、機関投資家や海外のファンド勢も注目しているようです。
思惑での子会社の「先回りの買い」から株価が急上昇するケースも見られます。
注目される親子上場銘柄とその理由のまとめ
日本の株式市場には、約6%もの親子上場があるといわれています。
親子上場は、子会社の少数株主の権利がないがしろにされる場合があるという問題点が指摘されていました。
2019年に国がこの問題を取り上げたことにより、東京証券取引所は親子上場のルール改正を行う旨を発表。既に親子上場解消の動きが活発になってきています。
例えば、日立は、20社ほどあった子会社が3社にまで減っています。
親子上場の解消には、TOBが手法として用いられることが多く、投資家の注目を浴びています。
東証は、現在の一部・二部・ジャスダック・マザーズの市場を3つの市場に再編する計画を立てています。
その再編でどの市場に属するか?その条件に親子上場も絡んできそうです。
企業も様々な角度から対策を考えていくことは必然。親子上場の解消の流れは、今後も加速していきそうです。